遺言書はどこに保管しておけばよいですか
【質問】
終活を始めたのをきっかけに遺言書を作りました。銀行に貸金庫を持っているのでそこに保管しておこうと思うのですが、貸金庫に遺言書を保管しておくのはおすすめしないと言われました。おすすめの保管方法はありますでしょうか。
【回答】
質問者様が言われたように、遺言書を貸金庫で保管することはおすすめしません。
私も、遺言書作成のサポートをさせていただいた方に対しては、日頃からそのように説明させていただいております。
理由は、貸金庫の開扉も、相続手続きが必要になり、開扉までに時間がかかるからです。
その間、遺言書の存在が誰にも気づかれずに相続手続きが始まってしまうと後々とても面倒なことになります。
遺言書の有無は、相続手続きにおいて、まず確認する作業になりますので、速やかにその存在がわかるように工夫をしておかなければなりません。
ここでは、遺言書の保管について解説させていただければと思います。
遺言書の保管において留意するべき点
遺言書の保管方法を考えるにあたって留意すべき点は以下の通りです。
@被相続人がお亡くなりになった後、遺言書の存在が速やかに確認できること
A紛失や改竄、破棄の恐れがないこと
遺言書の保管方法
先の留意点を踏まえて遺言書の主な保管方法を見ていきましょう。
以下の通りです。
@公証役場で保管してもらう
A相続人や親族に保管してもらう
B遺言執行者に保管してもらう
C銀行に保管してもらう(=遺言信託)
D法務局に保管してもらう
ひとつずつ解説していきます。
公証役場で保管してもらう
公証役場で保管してもらう方法は、遺言書を公正証書で作ることです。
公正証書遺言を作成すると原本は公証役場で厳重に保管されます。
公正証書の保存期間、公証人法施行規則により20年と定められていますが、遺言書の場合は「特別の事由」に該当し、公証役場によって取扱いが異なりますが、20年よりもはるかに長い期間、保管してもらえます。例えば遺言者の年齢が120歳に達するときまでと定めている公証役場があります。半永久的にと定めているところもあります。
少なくとも、遺言者の方が亡くなるまでの間は保管しておいてくれると考えて差し支えないでしょう。
公正証書で作成した遺言書は遺言検索システムによって検索することができます。
また、公正証書遺言の場合、原本の他に、正本と謄本が交付されます。
通常、正本は遺言執行者の指定があれば遺言執行者に、謄本は本人や親族が保管する場合が多いです。
相続人や親族に保管してもらう
この方法では親族の方が遺言書の存在を把握することができ、遺言者が亡くなり次第速やかに親族が遺言書を確認することができます。
注意点は、預ける親族の方です。
高齢であれば遺言者よりも先にお亡くなりになるリスクもあります。
また、あまり考えたくないことですが、預ける親族を間違えると、遺言書を勝手に破棄されたり、改竄されたり、隠されたりするリスクもあります。
遺言執行者に保管してもらう
遺言執行者とは、遺言者がお亡くなりになった後、遺言の内容を実現する人です。
遺言書内で指定しておくことができます。
遺言執行者は親族以外でも指定することができるので、我々行政書士がご依頼を受けることもあります。
その場合は、作成した遺言書をお預かりして、遺言者の方がお亡くなりになったことをご連絡いただけるように、ご親族の方等にお願いをしておくことになります。
ちなみに当事務所では、遺言執行者に指定された際の遺言書の保管を無料で行っております。
銀行に保管してもらう(=遺言信託)
遺言信託では、公正証書遺言を作成した後に、遺言者が口座を保有する銀行に遺言書を預けます。
預金口座の相続手続きの際に、銀行に遺言書が預けてあれば、自動的に遺言書の存在が明らかになるという仕組みになります。
つまり、遺言書の存在や内容をどうしても親族に知られたくない場合には有効な方法です。
ただし、銀行でもトラブル防止のため、遺言書の存在を親族にも知らせておくようアドバイスするところがほとんどだと思います。
デメリットは、手数料がかなり高額であるという点です。
金融機関にもよりますが、プランによって、数十万から百万単位で前払い金を支払うことになります。
また遺言書の保管費用として定期的な費用がかかります。
注意すべき点は、遺言書の存在を親族に知らせていない場合、遺言信託をした銀行に遺言者の口座があることを相続人が知らないと、その銀行に相続手続きをしないゆえに、遺言書の存在も明らかにならないということです。
口座の存在を事前に伝えとくなり工夫が必要になります。
法務局に保管してもらう
遺言書保管制度を利用することで、遺言書を法務局で保管してもらうことができます。
遺言書保管制度の利用は、自筆証書遺言に限ります。
先ほど、公正証書遺言の原本は公証役場が保管してくれると解説しましたが、簡単にいうと、その自筆証書遺言バージョンだと考えてください。
自筆証書遺言は、紛失・隠匿・改竄のリスクがデメリットのひとつでしたが、この制度を利用することで、そのようなリスクを解消することができるようになりました。
遺言書保管制度について、詳しくはこちらをご覧ください。
さいごに
以上5つの保管方法を解説してまいりました。
いずれにせよ、少なくとも遺言書の存在自体は、相続人等に伝えておくことをお勧めします。